2012年5月16日水曜日

ネットクリニック Www.netclinic.jp 境界性パーソナリティ障害



 衝動性と自己統制の欠如を基本的特徴とします。

 境界性とは、元々、精神分裂病と神経症との境界にある病気という意味でした。

原因と背景
 境界性パーソナリティ障害は増加しつつあります。特に都市部で多くなっています。
 境界性パーソナリティ障害では、生育環境における愛着関係の不足に由来する感情的不安定さに、社会変化による伝統的規範の影響力の失墜が加わることによって、衝動的行動が発生すると考えられます。
 境界性パーソナリティ障害の増加は、現代の社会が従来の価値や伝統が色あせ、その力を急速に失っている中で、生き方を自分で選択し決定していくことが若い世代に避けられない課題として課せられている時代であることと無関係ではありません。伝統的な社会規範の影響が弱まり、価値観が動揺している社会では、若い世代にとって適切な自己同一性の確立が困難となり、同一性拡散が生じやすく� ��ります。
 現代の家族における核家族化や少産化傾向、女性の就業率の上昇などから、子供の成育状況には情緒の起伏が減っています。子供達は孤立して抑うつ的となり、虚無感に悩み、その空虚を埋めるため、ドラッグやセックス、過剰な刺激を求めます。この変化は現代の哲学や芸術が明らかにしている現代人の自己断片化の危機(例えば1960年代に実存主義があらわにした存在の基盤の不安定さ)にも認められる特性です。
 子供時代の心理的虐待が原因の一つであるとする研究もあります。身体的及び性的な虐待、無視、敵対的な葛藤、早くに親を亡くしたり、親と別れたりしたという小児期の生活歴がしばしば見られます。持続的な愛着関係が維持されず外傷体験が繰り返されたため、安定した対人関係の形成が困難にな っていたと想定されます。
 境界性パーソナリティ障害の家族は、家庭内の世代間境界が曖昧であり、家庭内の役割規定が不明確で、家族関係は葛藤に満ちており、怒りや敵意などの激しい感情が渦巻き、相互のサポートに乏しいとされています。
 また、境界性パーソナリティ障害の患者の第一度親族には、一般人口に対してこの疾患が約5倍多く見られます。

統計
 一般人口の1〜2%に見られます。精神科外来患者の約10%、精神科入院患者の約20%と推定されています。
 患者の75%が女性です。
 自我同一性の問題を抱えた青年は、一時的に境界性パーソナリティ障害のような誤った印象を与えることがあります(情緒的な不安定さ、実存的なジレンマ、不確かさ、不安を引き起こすような選択、 性的方向性に関する葛藤、職業を決める際の社会的圧力など)。
 境界性パーソナリティ障害患者の25〜75%が大うつ病を、5〜20%が双極性障害を持つといいます。
 患者の3〜10%が自殺すると考えられます。

診断と症状
 衝動性:他者への攻撃性、自己破壊的行為(自傷行為、自殺企図、大量服薬、リストカッティング)、摂食障害、アルコール・薬物乱用、性的逸脱など
 感情変化:気分の変わりやすさ、抑うつ症状、見捨てられ不安、無気力、空虚感と万能感、怒りなどのめがぐるしい変化
 精神病性症状:一時的
 不安定な対人関係:理想化とこき下ろし

特徴

・自己像
 ずっと続く自己像または自我感情の不安定さを特徴とする同一性の障害が存在します。目標 、価値観、職業などについての考えや計画が突然に変化します。患者の自己像は、通常悪い、邪悪なものですが、ときに自分が全く存在しないと感じていることもあります。患者の行動は、構造化されていない職場や学校では悪化します。

・対人関係
 想像の中で見捨てられることを避けようとする異常な努力を行います。周囲の変化に過度に敏感で、一時的な別れや避けられない計画の変更に対してさえも、強い見捨てられ恐怖や不適切な怒りを体験します。見捨てられることを避けようとする異常な努力が、自傷行為や自殺企図のような衝動行為となって現れることもあります。
 不安定で激しい対人様式を示します。1、2回会っただけで、相手を理想化しますが、その人が十分なものを与えてくれないと感じると、即座に 変化して相手をこき下ろすようになります。他人に対する見方を突然、極端に変化させる傾向があります。
 対人関係よりも移行対象(ペットや生物以外の持ち物)と一緒にいるときの方が安全だと感じていることがあります。
 表面的疎通性は過度に豊かだが、内面的な疎通性の確率は困難という二重構造。
 依存的関係。
 寂しい、甘えたい、という気持ちの直接的かつ頻繁な表現。
 自分のことを一方的に言い立てる。他人を自分の一部と見なす。
 遠慮を知らない。他人への配慮を欠く。反面、他人の言動には敏感。


おむつかぶれの治療法

・感情の不安定
 気分の著しい反応性(通常は2、3時間続く強烈な挿話性の不快気分、易怒性、不安)による感情の不安定を示すことがあります。怒り、パニック、絶望のエピソードは、対人関係のストレスに対する患者の極端な反応性を反映しています。
 患者は慢性的な深い空虚感を抱き続けています。「なぜ生きなければならないのか」という疑問を抱いています。不安感、孤独感、焦燥感を感じています。しばしば、不適切な激しい怒りを表現し、怒りを制御できません。患者は、爆発的に激しい言葉を吐き、見捨てられたと思い、怒り、その怒りはしばしば恥ずかしさや罪悪感に繋がり、自分が悪いという気持ちになります。極端なストレス下では、一過� ��に精神病様症状(幻覚、妄想様観念、関係念慮、催眠現象や離人症などの解離症状)が起こることがあります。
 現実感消失とでもいえるような不安を感じます。自分の内部に高まっている得体の知れない力によって自分が崩壊してしまうような感じになったりします。
 孤立に基づいたある種の抑うつ状態。
 際だった怒りの表現。感情が不安定で気分の変動が激しい。好き嫌いが激しい。
 問題の一部が解決すれば、万事がうまくいくと思いがち。

・予期せぬ恣意的な衝動性
 自分を傷つける可能性のある衝動を示します。賭博、浪費、むちゃ食い、物質乱用や安全でない性行為、無謀な運転などがあります。自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為は、患者が救いを求めるためのものであることが多い。 自己破壊的行動は、通常、分離や拒絶の驚異や、自分の責任が増大する可能性が示されたときに促進されます。自傷は、自分が実感できないときに起こり、自分の感情が再認識されたり、自分が悪いという感覚から抜け出したりしたときに収まることが多い。
 患者は、目標が実現しそうになるまさにその瞬間に、それを台無しにしてしまいます(卒業直前に退学してしまうなど)。

 若い女性に多い。若くて美しければ、自分の思い通りに相手を操作しやすい。
 対人関係で問題。相手を過剰に理想化したり、憎悪したり。極端な過大評価と価値下げ。スプリッティング。
 怒りやすい。
 欲求不満に対する耐性が低い。
 無茶な要求をする。極端。真剣さがある。強硬。一貫性がなくすぐに変わる。
 相手の 気を引こうとする。注意を振り向けさせようとする。
 対人操作。言葉や態度で。相手の心理を読み取る。
患者は特定のスタッフには好意的に、別のスタッフには拒否的に接する。結果として、スタッフの関係を引っかき回す。スタッフ間に対立を作り出す。感情的になる。チームとして統一性を保つ。患者によって引き起こされる陰性感情の処理に失敗すると、厄介な患者は退院させるべきだという反応が引き起こされる。
 虚言。作り話。不幸な生い立ちを語る。仮病。同情を誘う。
 自傷行為。リストカット。周囲への当てつけ。気まぐれ。操作しようとする。
 即行動化。
 見捨てられ不安。抑欝感情。
 だだをこねれば自分の望み通りになると思っている幼児に似ている。感情面の幼児。常識的な生活� �度を学習させる。解釈よりも、経験的要素が重要である。

 以上の症状が長期間持続し、広範囲にわたって認められる。

経過
 境界性パーソナリティ障害の経過はかなり多様です。最も一般的には、成人期早期の慢性的な不安定さが続きますが、このこの疾患による障害と自殺の危険性は、成人でも若い時期に高く、加齢と共に低くなっていきます。患者の大部分は、30歳代や40歳代になれば、対人関係も職業面の機能をはるかに安定していきます。
 繰り返し失業したり、教育の機会が妨げられたり、離婚したりします。
 感情障害や物質関連障害が合併しているときに、特に自殺による早すぎる死が起こります。自傷行為や自殺企図の結果として、身体的なハンディキャップが起こることもあります� ��

合併
 境界性パーソナリティ障害と合併することの多い障害は、気分障害、物質関連障害、摂食障害(特に多食症)、PTSD、注意欠陥多動性障害です。他のパーソナリティ障害ともしばしば合併します。

治療
 青年期に激しい症状を示す境界性パーソナリティ障害の患者を、彼らがその症状のために決定的な自他の破壊に至らないように支え、特に自殺を防ぎ、現実適応を援助しながら、彼らが40歳になって比較的安定するのを待つことが基本です。これに加えてパーソナリティの再編成に踏み入ることができればそれに越したことはありません。

 衝動的行為の不合理さ、自己の抱く幻想に気づかせます。自己を洞察させます。
 中立性を保つことが大切です。それは冷たさとは違� ��ます。反抗的な態度に逆転移(怒り)してはいけません。

 治療目標を具体的に設定
 まず主訴を明確化します。頭痛などの身体症状、不安や抑うつ、家庭や職場での人間関係の悩みなどが多いですが、「何となく生きていくのが辛い」とか「自分がはっきりしない」などの漠然とした訴えもあります。こういう漠然とした訴えの背後に、空虚感や孤独感から自分を救ってくれる関係への渇望が潜んでいます。その気持ちを理解することは必要ですが、治療目標は、毎日通学できるようになることなどと具体的に定めます。


神経性食欲不振症の症状

 治療の構造化(治療の枠組みの設定)
 この治療では自分は何をしたらよいか、どう振る舞うことが期待されているかということが患者から診て明確にわかるような治療的セッティングをすることを構造化といいます。境界性パーソナリティ障害の患者は無構造な状況で退行し病理を露呈しやすいので、ただ漫然と受容的に接するのは混乱を招きます。
 面接時間を定例化、時間厳守(開始・終了)とします。約束の時間に来ないなどの逸脱があれば、患者の感情を話し合います。面接時間が終了しても立ち去ろうとしない患者に対して話を聞くということは。自我支持的ではなく、むしろ退行促進的です。

 限界設定(リミット・セッティ� ��グ)
 患者の様々な要求に対して、ここまではできるけれどもここからはできないということをはっきりさせます。限界がはっきりしない態度は患者を混乱させます。ここまではよいけれどここからは駄目という現実の壁になることが必要で、それが患者に取り入れられて患者の「心の壁」になります。
 自己破壊行動(リストカット、薬物乱用など)の禁止、不適切な怒りの表出(暴力)の禁止、治療者の私的生活への侵入の禁止。受け入れられないことを言明します。患者の利益にならないことを理解させます。

 行動化(アクティング・アウト)の対処
 治療破壊的な行動を阻止します。限界設定を行います。転移を自覚させます。
 行動化の意味を自覚させます。不愉快な感情は行動として表れます。 それは防衛なのです。自己統制のために、それを自覚させます。行動化が有害であることを理解させます。
 行動化は自分への関心及び助けを求めるサインでもあります。このサインがあった場合、治療者にできることとできないことを明確に示しておきます。明確な限界設定を示すことが、サインに応じることであり、患者の内部の枠組みづくりを促すことになります。
 行動化の中に適応のための努力があることを読み取ります。例えば、慢性的な空虚感や離人感から一時的に逃げ出す(リストカットしたときだけ生き生きと感じる)、一層破壊的になることを防ぐ(親を殴るかわりにガラスを割る)、特定のサブカルチュアの中で評価を受ける(乱暴な運転で暴走族のヒーローになる)、陰性の関心であれ周囲の関心を引く( 怒るときだけ親が振り向いてくれる)などの、患者なりの適応の努力という面を治療者が理解していることを伝えた上で、それが今や不適応的、自己破壊的になっていることを患者に直視させ、制止します。言葉での制止が無力と思って制止しないでいると、患者はそれを黙認と取りかねません。

 テスティング(試し)に対処
 患者は治療初期に、治療者の能力を試そうと、挑発してきます。自己破壊の脅し、治療中断の脅し、計画外の接触、欠席などがあります。

 逆転移を防ぐ
 侵襲的な言葉の暴力に対して、引き下がることなく、また報復することもしません。患者さんの陰性感情を自分に向けた個人的なものとして受け取りません。自分自身の怒りを率直に認めます。

 感情の同定、その由来� ��吟味
 以上の介入によって、患者に自己の振る舞いの底にある感情を見つめさせ、それを十分に体験し、言葉で表現できるよう援助します。このとき、治療者は患者の中でまだ言葉になっていない感情を言葉にして提示します。これによって患者は、自分の感情を意識化できるようになります。そしてそれを自分に受け入れます。そして、治療者と共にその感情の意味や由来を検討することができます。
 けれども、基本的には現在の症状に焦点を当て、生い立ちなど発生原因の追究には労力を費やしません。
 患者は自己の感情を見つめるとときには混乱します。そのとき重要なことは、治療者がすぐに手を差し伸べてかわって対処してやろうとすることではなく、患者がその混乱から立ち直り、自ら進むべき道を見出す� ��あろうと信頼して、「それであなたはどうするつもり?」と問うことです。それは決して患者を突き放すことではなく、自分で自分の問題に対処しうる個人として患者を信頼することなのです。

対応(対人操作manipulationに対する体制
 治療者のうち、訴えを聞いてくれる"良いスタッフ"と、聞いてくれない"悪いスタッフ"を作り、治療方針の混乱やスタッフ間の対立・分断を招き、治療を失敗させることが少なくありません。家族内でも同様です。これを防ぐために、治療スタッフ感で協議・確認の上、原則を確立し、患者や家族に説明し、約束を得ます。
 ・全ての要求・訴えは担当医を通す
 ・治療スタッフは確認事項や担当医の指示に従い、各スタッフが個々の裁量で変更しない
 ・スタッフ間 で疎通性を保ち、不信が生じないようにする

 ・患者に親切にしない。要求がエスカレートする。応えられなくなると、見捨てられたと思う。自傷で反応。
 ・面接は予定した時間内で。過剰な依存を防ぐ。依存させると、最後に裏切られたと思って絶望し、自殺の可能性も。
 ・話を真に受けない。不幸な身の上話に同情しない。他のスタッフの悪口も無視。
 ・仮病に親切に対応しない。
 ・自傷行為に反応しない。関心を引けば思うつぼ。繰り返す。
 ・対人操作を防ぎ、自分の要求が必ずしも通らないことを学習させる。


鎌状赤血球貧血硬化性/治療

 治療者との人間関係を期待する患者さんは、最初の内は治療者の考えに沿った、優秀な患者として振る舞います。治療者には治療が順調に進んでいるように感じられます。だが、この関係には患者の多大な労力が払われているため、次第にそのストレスに耐えきれなくなり、無断欠席をするようになります。それに対して治療者が呼び出したりすると、怒りが爆発し、行動化します。また、治療者が気をよくして時間外面接などの要求に応じると、次第に要求がエスカレートし、応えられなくなるとやはり行動化に出ます。

 鋭く治療者の矛盾点などを批判してきます。またそれが適切であることも多いのです。だが、謝りすぎは治療構造を破壊してしまいます 。
 衝動的行動の裏にある心理を読み取ります。追い込まないようにします。
 「自分はこれだけ努力しているのに」というのは無意味で、有害です。熱心に尽くそうとすると失敗します。

薬物治療
 特異的に効果のある薬物はないものの、有用性はあります。家族による服薬管理が必要です。
1.衝動的攻撃性・易刺激性
 気分安定薬:テグレトール、アレビアチン、リーマス
 抗精神病薬:ヒルナミン、ロドピン
 SSRI:フルオキセチン・攻撃的行動と自殺行為を減少させます。
 βブロッカー
2.抑欝症状
 三環系抗うつ薬:作用には差がある。易刺激性と衝動性を高めます。過量服用すると死の危険がある。
 MAOI(フェネルジン):うつ病症状、怒りや敵意、不安に対して有効です。< br/> SSRI:安全であり、抗うつ作用と抗衝動的攻撃性があります。
 精神刺激剤:アンフェタミン。ADHDの成人型といえるような衝動性に適応になります。ただし分裂病様症状が悪化する可能性があります。
3.精神病症状(魔術的思考・関係念慮・知覚の歪曲など)
 抗精神病薬:セレネース

副作用
 抗不安薬:衝動コントロールの悪化、抗不安薬への依存性
 三環系抗うつ薬:衝動性亢進、焦燥感。
 カルバマゼピン(テグレトール):うつ状態を生じる
 ハロペリドール(セレネース):抑うつ、眠気、倦怠感
 多量服薬で危険:三環系抗うつ薬、MAOI、抗てんかん薬、リチウム

精神療法
 認知療法、力動精神療法、弁証法的行動療法など。

<直面化>
 患者自身が気づいていな� �面、特に自己破壊的な面に気づいてもらう。患者の行動と結果を示し、なぜそうなったかを考えてもらう。解釈はしない。指示もしない。自分でなぜか考えてもらう。
 自らの力で自己の問題性に気づき、それを改善する方法を学習する。自己洞察を進める。その言語化を援助する。

<分裂splittingに対する対応>
 患者にとっての他者は"良い対象"か"悪い対象"に分裂しており、スタッフへの評価も目まぐるしく変わる。患者自身も、社会に適応できる"良い自分"と、行動化や他者を攻撃する"悪い自分"に分裂しており、その間を行き来する。
 共に急激に変化する"対象"と"自分"で形成される対人関係から行動化が起こる。その両者の分裂に対応することが重要。
 ・医師は患者にとって不変の対象であ ることを示す。
 ・"良い自分"も"悪い自分"も同一人物として、医師は包容力を持って対応することを示す。
 ・調子の良いときには、"良い自分"が、行動化や他者攻撃の際には"悪い自分"が出現していることを患者に伝えて、分裂への気づきを促す。
 ・"悪い自分"を非難することは避け、"良い自分"が患者の中で成長するよう促す。

<見捨てられ抑うつabandonment depression及び衝動性に対する対応>
 患者の見捨てられ不安を弱めることが衝動性のコントロールに繋がり、自我の成長・強化を促す。
 ・契約内容を守る。要求が断られることもあることを受け入れることができるように促す。
 ・契約が破棄されそうなとき、どうしてそう思うのか、話題にする。
 ・衝動が起こったとき、どうしてそう思うのか、話題にする。

<家族への説明>
 家族は患者の操作性のため疲れ切っていることが多い。患者の状態と疾患に対する説明をし、不安を和らげる。過度に依存的な家族関係を見直す。

 薬物治療はあまり効果が認められないため、面接が中心となるが、感情の同様が激しく、転移と逆転移によって治療関係が破綻し、症状を悪化させることが多い。
 そのため� ��間接的な接触を持つ交換書簡指導法(ロール・レタリング)(役割交換書簡法)が良いと言われている。そういった意味でも、ホームページやメールを通じた治療法には可能性があるのではないか。
 また、絵画や箱庭などイメージを媒介とした治療法も有効であると示唆されている。


 ロール・レタリング
 基盤はゲシュタルト療法。個人が持つ両極性の対決を図る体験療法。矛盾やジレンマに対して気づきを促す。内心の葛藤。アンビバレンスの処理。
 文章を書くことによって、感情や思考が明確化される。うまく表現できると自分の精神のことがよくわかる。
 仮想書簡文。自分が差出人であり受取人。現実を直視し、二人の当事者の立場に立って交互に気持ちや考えを相手に訴える。現実の対象者が読むことはなく、反論もないめ、率直な表現が可能。感情や衝動的行動の明確化。自由な表出により、カタルシス作用。感情の処理。相手への理解と受容が促進。受容と対決を経る。幻想や葛藤が外在化され、衝動的行動に対して客観視。自己と他者の 視点。
 感情移入的理解の乏しさを改善。
 自己の非論理性に気づく。自傷的な思考に気づく。自己の未熟性と問題性に気づき、現実検討能力を高める。BPDは非論理的、非合理的な思考で、自己の存在を客観的に見つめられない。
 対象者との関係として再現される、治療者との転移・逆転移の問題を回避。患者自身の内面の対話で処理。
 治療者は心理的変化のプロセスを理解できる。本人も振り返ることが出来る。
 家庭内での人間関係の問題点などを解明。家族ケースワークに繋げることができる。過度に依存的な家族関係を見直す。

実践方法
 時間・場所等の制約がない。患者が自主的に書く。対象者は、患者のパーソナリティ形成に深い関わりのある人物。家族など。恨み、反発、欲求などを自由に訴 える。直面化を促進しやすい。また、見捨てられ不安と抑欝感情の軽減につながる。
 指示はしない。適時、問題の直面化は行う。気づきの促進のため課題を作ってもよい。自己破壊性をテーマに。
 治療者が長期不在でも、課題を与えることによって、自己洞察を促進することが可能。

治療段階
 初期:治療者と患者の信頼関係構築。支持的療法。ロール・レタリングの技法習得。
 中期・受容→対決→妥協。衝動的行為に直面化。傷つけるだけだと気づきを促進。
 終期:行動化を諦める段階で、逃避、否認などの抑欝に対する防衛が生じるため、これをロール・レタリングによる自己カウンセリングで軽減。対象者は親和的な人物。最後に、治療者からの分離不安に対処するため、互いのレタリングを行い、� �立。
 境界性パーソナリティ障害の治療には長期間を要する。自己破壊行動が2年以内に減少しなければ、治療方法を変更する。3年以内に就労していない場合も。

境界例の入院治療(早期の症状解消と社会適応を図る)

<適応>
 自傷他害の危険がある場合。
 精神病状態にある場合。
 危機介入として。
 なるべく早く退院させる。長期入院は、発達のために必要な社会での経験の機会を患者から奪い、退行促進的に作用します。

<治療方針>
 治療の枠組みを設定し、治療の構造化を行います。安易に流されて変更しない。
 入院の目的を明確にします。ストレスの多い状況から離れて心身の休養を図る、家族などとの病的な交流から離れ、新たな環境の元で対人関係の障害を見直す、過� ��に依存的であった家族関係を見直す、病院を気にして仕事や学校に行ってみる、などと明確にします。その上で入院期間の予測を告げます。
 要求の拒否、制限。衝動性を抑える制限設定(行動制限など)。行動化を防ぐ。制限は患者の行動化があっても動揺して変化させない。これは治療的立場を守り、その立場の上で援助していこうとする構えの表れである。患者自身にもそのことを理解してもらう。行動療法的行動制限が主なアプローチ。約束を守れば、自由が広がる。自己統制が出来るように限界設定を中心にした治療計画。
 複数で対応する
 行動化に対処する。リミット・セッティングをしやすい閉鎖病棟が適している。保護室の使用もやむを得ない。自分の逆転移感情を行動化しない。
 保護された空間では 転移を起こして退行しやすい。
 治療意欲が低いため、治療目標を設定する。
 退院時には家族面接や、患者・家族の同時面接を行い、家庭での限界設定を確認する。


現代を生きる境界性パーソナリティ障害
 境界性パーソナリティ障害の患者は、時代の要請に応えようとして破綻しています。彼らは自他の境界が不鮮明な世界に生きています。それは容易に周囲に浸透すると同時に、周囲からも浸透される世界です。かれらは自然と対人関係に曖昧さを嫌い、直接的な結びつきを求めます。そこでの彼らは強い親近感や一体感、逆に疎隔感や違和感を抱いたり、極端な理想化や愛着、憎悪や忌避といった対人関係の激しい動揺を示します。同時に鋭敏に周囲の心の動きを察知し、一種特有の感受性の鋭さや、優しさ(borderline empathy)を見せます。こうして彼らは自分自身を激しく変化させると同時に周囲に強い影響を与えるのです。
 彼らは確かな現実感を抱くことができず、一つの現実の中に留まることができません。彼らの現実は現実性の欠けた、いわば仮想的なものとして体験されています。彼らは異邦人であり、アウトサイダーですが、そのような対抗的同一性に安住することも許されていません。彼らの自己のあり方には定式がなく、それは拡散、断片化の危機につきまとわれています。彼らはその時々の部分部分の現実に浸り込んでおり、現実の体験を統合し結びつけて、全体として受け止めることができないでいます。
 これらの特性は、現代の若い世代を中心に広く共有されています。優しさや細やかな共感の通い合いに彩られた直接的� �関わりを求める感性が特徴的です。また、氾濫するマスメディアの中には、わざとらしい奇矯さや人々を驚かせるためだけの過剰な刺激が満ちています。人々はその刺激によって境界性パーソナリティ障害の患者と同じように日常生活の単調さ、虚しさから抜け出し、自己の感覚を取り戻すことができます。このようにして過剰な刺激によって不安から抜け出すパターンはごく一般的なものになっています。現実の体験を全体的にでなく部分として受け止める特性も、現代人ではやはり一般的です。これによって我々は受け止めきれない過酷な現実に直面して絶望の淵に沈むかわりに、それを切り離して別の領域での活動を開始することができます。
 生まれながらにして数々の不条理にからめとられ、自己断片化の危機にある現代人� ��「悲劇」を、生真面目に受け止めるなら、我々は虚無主義に追いやられてしまう。そのような危うい基盤の上にでも、それを切り離すことによって、生活を組み立てていくことは一つの適応努力であるといえます。境界性パーソナリティ障害の患者はそうして生きています。彼らは生育環境でも、生育史でも、自他の境界を定め、自らの統合を図ろうとする動きは希薄です。彼らは無構造な状況で混沌としたままでいきていくことを選んでいます。
 また、彼らには彼ら独自の活動の豊かさがあり、サブカルチュア的コミュニティやサークルで新奇な活動を開始したりします。
 実存主義が暴いた存在の基盤の不安定さの悲劇の中で、人間は「悲劇」としてことさらに重みをもって捉えられるのではなく、そのものとして生きてい� ��ことが要請されています。時代は我々にある程度統合された人格機能を要求する一方で、一つのあり方に固執せずに変化することを求めています。



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